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2008-02-05 10:20

(連載)現状維持選択した台湾有権者(4)

岡田充  共同通信編集委員
 総統選の見通しに触れる。立法院選の「不変要因」で指摘したように、与野党の基礎票に大変化はなかった。与野党の力の差は「5対4」であり、与党が10%上積みすれば五分五分になる。立法院選の投票率は58%台だったが、総統選では80%前後になると予想されることから、互角の勝負と考えてよいだろう。ここでは総統選に向けた与野党の取り組みと、勝敗に影響する幾つかの要因を挙げる。

 民進党長老は立法院選直後「中途半端な負け方ではなく惨敗したのは良かった。総統選で逆転するにはそれ以外の選択肢はない」と述べ、「状況は2000年以前に戻った。国民党独裁の面を強調して、国民のバランス感覚を呼び覚ます。今後は10%をどう取るかだ。対中政策はもはや焦点ではない」と語る。今後「2.28」「3.14」(反国家分裂法成立記念)での大衆動員を通じて、「国民党独裁時代の恐怖心」をあおる戦術をとるだろう。いわゆる「振り子効果」に期待する声だ。

 同じ与党でも相反する見方がある。ある財界人は「総統は民進党、議会は国民党という「ねじれ現象」に国民は嫌気がさしている。民進党の争点設定の方法は、野党的過ぎた。住民投票も選挙利用という受け止め方が強い」と指摘し、「振り子効果は悲観的。総統は国民党の協力なくして何もできない。連立を模索し、行政院長も国民党から出す可能性がある。多くの中間層からみれば、台湾の安定、発展のために国民党で良い、と考えるのではないか」と逆転には悲観的である。

 謝長廷は、李登輝をはじめ許信良元主席らを矢継ぎ早やに訪れて協力を求め、中間票掘り起こしに力を入れているほか、総統選に臨む姿勢として(1)買収などの選挙における不正防止を徹底、(2)社会的混乱を利用しない、(3)族群矛盾や社会対立を増長しないなどの、「自戒」「低姿勢」を強調している。住民投票には本来乗り気でなく、重点は置かない。一方、馬英九は総統に就任しても中国との統一を急がず、「不統、不独、不武」の「新3不」で現状維持を貫き、中国とは経済、和平両協定を結ぶとしている。立法院選圧勝下の政権運営については、「総統罷免や国民党による組閣要求はしない」と至って低姿勢だ。(つづく)
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