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2008-11-27 09:49
(連載)オバマ新大統領下の米中関係(5)
関山 健
東京財団研究員
以上の話を日本との関係を踏まえてまとめれば、オバマ次期大統領は、内外の情勢により多国間協力体制を志向すると考えられ、東アジアにおいては、ブッシュ政権の初期に見られたような日米同盟で中国に対峙していくという立場ではなく、またクリントン政権の初期に見られたような日本パッシングでもなく、日米中の多国間の協力体制で、北朝鮮などの地域の地政学リスクを管理(マネージ)しようと考える傾向にある。世界的な金融危機は、中国との経済協力の重要性を増し、ますますそのような傾向を高めていくことになろう。ひるがえって、こうした国際政治経済情勢の流れの中で、日本はいかに立振舞うべきなのだろうか?その鍵は「自国の立場の明確な主張」という点にある、のではないかと私は考える。
アメリカも中国も協調的なマルチラテラリズム(多国間主義)のアプローチを重視する流れにあるからこそ、日本は自国にとっての利害を意識しつつ、自らの立場を明確にして、この流れに乗ることが重要であろう。言い換えれば、協調的な国際環境のなかで臆することなく自国の利益の最大化を図ることである。たとえば、北朝鮮の問題で言えば、朝鮮半島の非核化と拉致被害者問題の解決の両立なくして北朝鮮への協調支援には参加しえないとの立場を堅持することであり、今後の国際金融システム改革の問題で言えば、日本の経済規模に見合った発言権の確保を貪欲にでも追及することだ。
こう主張すると「日本が自国の利益に固執すれば、米中協調の影に置いて行かれるだけではないか」と心配する向きがあるが、私はそうは思わない。北朝鮮の問題にせよ、国際金融危機の問題にせよ、日本の協力なくして米中だけで解決できる問題ではないのである。アメリカが必要とするのは中国だけではなく、中国が重視するのもアメリカだけではない。両国にとって日本との協調も劣らず不可欠であり、日本が自国の立場を堅持すれば、米中もこれを無視するわけにはいかないのが、今の国際政治経済情勢である。
戦後長らく、日本の外交政策は、米中関係のディペンデント・バライアブル(従属変数)であった。いまや世界金融危機により国際政治経済情勢が変わりつつあるなか、これまでの国際政治経済を牽引してきたアメリカでは、オバマ候補が「チェンジ(変革)」を訴えて大統領選に勝利した。日本も、国際政治経済のなかで自らをディペンデント・バライアブル(従属変数)からインディペンデント・バライアブル(独立変数)へと「チェンジ」する、千載一遇のチャンスが来ていると私は考える。(おわり)
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