e-論壇「議論百出」 e-論壇「議論百出」 グローバル・フォーラム グローバル・フォーラム
 「議論百出」へようこそ。投稿へのコメントでないご意見は「新規投稿する」ボタンをクリックして投稿してください。
 なお、投稿記事を他所において引用、転載する場合は、その記事の出所が当e-論壇であることを明記してください。

投稿日で検索  //// 
キーワードで検索   
※キーワードはスペースで区切って複数の言葉を入力できます。
  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]
(連載1)イエローベストに揺れるフランス   
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-12-10 11:40 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
No.3670
 「右派でも左派でもない」と強調し、政治への信頼を回復すると叫んで2017年に就任したマクロン大統領は、3週間続けてパリで発生した数十万人規模のデモとその暴徒化によって窮地に立たされている。この背景にはビジネス志向の急速な経済改革への不満があり、これは結果的に右派と左派の連携を生んでいる。「芸術と美食の国」であるフランスは「革命とデモの国」でもある。どちらも既成概念に囚われず、自らのセンスと意志で新たな境地を切り拓こうとする点で共通するが、11月半ばから毎週末発生してきた大規模デモは、さすがにデモに慣れたフランスにとっても大きな衝撃となった。

 11月17日、約30万人のデモ隊がパリを覆い、翌週末の24日には前回より少ない約10万人規模となったが、一部が暴徒化。大統領官邸(エリゼ宮)周辺で火を放ち、2人が死亡し、数多くの負傷者を出した。警察は3人の極右活動家を逮捕した。デモのきっかけは、燃料税の引き上げだった。マクロン大統領は地球温暖化対策としてエコカーの普及を目指しており、燃料税の引き上げはその一環だが、それまでの急激な改革(後述)に不満が募っていたなか、これが最後のひと押しになったのだ。大規模なデモに対して、マクロン大統領は政治活動の自由を擁護しながらも暴力を批判する声明を出し、さらに燃料税の引き上げが揺らぐことはないと力説した。その一方で、フィリップ首相が数回にわたってデモ関係者と会談して事態の収束を図ったが、合意には至らなかった。その結果、12月1日に3度目のデモが発生し、少なくとも16人が逮捕される事態になった。

 この大規模なデモの最大の特徴は、特定の党派や集団によるものではなく、さまざまな立場の参加者が、生活への不満と反マクロンで一致して参集したところにある。デモ参加者には2017年選挙でマクロン氏に対抗した右派の支持者が目立つが、一方で左派系の労働組合関係者も少なくなく、極右政党から極左政党に至るまで幅広い野党もこのデモを公式に支持している。さらに参加者の多くは地方在住者で、このデモには「都市に対する地方の反乱」としての顔もある。この背景のもと、デモ参加者の多くは工事現場などで用いられる黄色の安全ベストを着用することで、「働く普通のフランス人の意志」を表現している。そのため、このデモは「イエローベスト」と呼ばれる。

 ニューヨークタイムズ紙(2018年7月9日電子版)によると、今年7月の世論調査では、マクロン政権の政策に対する「よい」という回答は29パーセント、「マクロン氏を信頼できる」という回答は32パーセントにまで下落していた一方、フランス24(11月27日付け)は約70パーセントがイエローベストを支持していると報じている。右派と左派が垣根を超えて連携する大規模なデモを呼び起こしたマクロン氏の政権運営とは、どんなものだったか。一言で言えば、それは「ビジネス界向けの政権」といえる。シリア難民の流入やテロの頻発、さらにイギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権に触発されて右派が台頭し、これに警戒感を強める左派との摩擦や衝突が深まるなか、「右派でも左派でもない」と強調して大統領となったマクロン氏は就任以来、アメリカ流の規制緩和や「小さな政府」路線に基づく改革を行ってきた。そこには雇用契約や農産物貿易の規制緩和や、公共サービス削減、主に富裕層向けの減税などがあげられる。フランスでは、もともと公的機関が経済にかかわる傾向が強く、GDPの50パーセント以上を公共セクターが占める(いま話題のルノーの最大の株主もフランス政府だ)。労働者の権利なども手厚く保護されてきたため、簡単にレイオフされない反面、これが経営者に新規採用を躊躇させ、失業率は慢性的に高い状況が続いてきた。また、安全保障上の観点から食糧とエネルギーの自給を重視してきたため、伝統的に農家への補助も手厚いが、これは財政赤字の一因にもなってきた。(つづく)

No タイトル 投稿者 日時
3670 (連載1)イエローベストに揺れるフランス 六辻 彰二 2018-12-10 11:40
3669 衆議院100人参議院50名体制へ 後藤 勝幸 2018-12-08 20:59
3668 (連載2)外国人受入れ総論賛成各論反対 ←  (連載1)外国人受入れ総論賛成各 緒方 林太郎 2018-12-07 12:47
3667 (連載1)外国人受入れ総論賛成各論反対 緒方 林太郎 2018-12-06 17:34
3666 (連載2)入国管理法改正案の隠れたリスク ←  (連載1)入国管理法改正案の隠 倉西 雅子 2018-12-06 11:42
3665 (連載1)入国管理法改正案の隠れたリスク 倉西 雅子 2018-12-05 15:09
3664 躍動するホーチミン 真田 幸光 2018-12-03 16:00
3663 (連載2)世界の流れに逆行する日本 ←  (連載1)世界の流れに逆行する日本 六辻 彰二 2018-11-30 13:41
3662 (連載1)世界の流れに逆行する日本 六辻 彰二 2018-11-29 12:54
3661 中国の‘消費大国化’はアメリカ抜きのグローバル戦略か? 倉西 雅子 2018-11-28 11:00
3660 北方領土は戻らず棚上げのままか 中村  仁 2018-11-27 15:43
3659 中国の南南協力外交の行方と世界 真田 幸光 2018-11-26 12:51
3658 (連載2)日本国政府の‘海外ファースト’のリスク ←  (連載1)日本国政府の 倉西 雅子 2018-11-23 17:11
3657 政治倫理を欠くトランプ氏との外交関係 中村  仁 2018-11-22 10:49
3656 (連載1)日本国政府の‘海外ファースト’のリスク 倉西 雅子 2018-11-22 10:30
3655 (連載2)外国人労働者受け入れ拡大の議論 ←  (連載1)外国人労働者受け入れ 岡本 裕明 2018-11-20 11:22
3654 (連載1)外国人労働者受け入れ拡大の議論 岡本 裕明 2018-11-19 12:10
3653 米中間選挙をみる新聞論調の甘さ 中村  仁 2018-11-16 10:32
3652 (連載2)時間経過と共に日本国が不利となる日中経済 ←  (連載1)時間経過と 倉西 雅子 2018-11-14 11:33
3651 (連載1)時間経過と共に日本国が不利となる日中経済関係 倉西 雅子 2018-11-13 12:50

  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]