e-論壇「議論百出」 e-論壇「議論百出」 グローバル・フォーラム グローバル・フォーラム
 「議論百出」へようこそ。投稿へのコメントでないご意見は「新規投稿する」ボタンをクリックして投稿してください。
 なお、投稿記事を他所において引用、転載する場合は、その記事の出所が当e-論壇であることを明記してください。

投稿日で検索  //// 
キーワードで検索   
※キーワードはスペースで区切って複数の言葉を入力できます。
  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]
(連載2)“平和の基礎”を守る武力行使vs“平和的手段”による平和の破壊 ← (連載1)“平和の基礎”を守る武力行使vs“平和的手段”による平和の破壊  ツリー表示
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳) [投稿履歴]
投稿日時:2017-09-21 11:14 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
No.3375
 今般、北朝鮮は、NPTが定めた行動規範に反し、核開発と保有に手を染めたわけですが、仮に、北朝鮮を核保有国として認めますと、この体制は、核保有国と非核保有国の両者の違反行為により、崩壊する道を辿ります。NPTの非批准国であるイスラエル、インド、パキスタンも核保有国とされ、NPT体制の不備は既に指摘されてはいるものの、これらの諸国の核保有は、公式の場で核拡散問題として議論されることなく既成事実化しました。こうした手法が許容されるとは言えないにせよ、首の皮一枚で繋がっていたNPT体制は、北朝鮮の核保有が核拡散の危機として表面化した以上、その存在意義は根底から揺ぎかねないのです。

 北朝鮮問題の解決に当たって、中ロは、核保有国でありながらNPT体制の“警察官”としての義務を捨てて北朝鮮の核を認め、アメリカもまた、“平和的手段”を優先して両国に追従すれば、義務と権利の均衡は崩れ、核保有国としての特権を認める必要性も消滅します。そして、北朝鮮の核保有が認められたからには、他の全ての諸国も、NPT体制の下で抑制されてきた核開発・保有の権利を主張することでしょう。“警察”がその職務を放棄する、否、犯罪者を幇助した以上、各自が正当防衛の権利を回復するのは、当然と言えば当然のことです。ロシアの識者は、北朝鮮の核がロシアに向かず、また、アメリカをも攻撃対象としないならば、北朝鮮の核保有は容認されるのではないか、とする見通しを述べていましたが、仮に、全ての諸国の核武装が実現すれば、如何なる弱小国であれ、相当数の諸国、特に周辺諸国が、ロシア、及び、中国に核ミサイルの照準を定めることでしょう。「平和的手段」を選択した場合、その先には、全諸国による核武装と軍拡競争が待ち受けているかもしれません(しかも、北朝鮮は核兵器、並びに、各種ミサイルの輸出国となる可能性が高い…)。もっとも、NPT体制という法秩序は崩壊しても、核の均衡が、幸いにも全世界レベルで実現し、多角的抑止による平和が訪れるならば、この選択が“絶対悪”であるとも言い切れないのが複雑なところです(ただし、核の使用をも厭わないテロ集団の手に渡った場合には平和は実現しない…)。

 その一方、あくまでもNPT体制を維持しようとすれば、武力を行使してでも北朝鮮の核・ミサイルを排除する必要があります。上述したように、核保有国が特定の違反国にのみ核保有を認めるとすれば、それは、NPT体制の終焉を意味するからです。“平和的手段”ではないにせよ、武力行使の結果として、核保有国が責任を負う核管理体制としてのNPT体制は維持されれば、人類は、一先ずは“ならず者国家”による核の脅威から解放されると共に、核の拡散を防ぐことができるのです。ただし、この場合でも、もとより同体制が内包する不平等性が問題視されていることに加えて、今般の中ロの行動で露呈したように、核保有国による義務違反は深刻な脅威ですし、NPT非批准核保有国等の問題も残ります。言い換えますと、たとえNPT体制が武力行使により維持されても、同体制は全ての諸国の安全を保障しないのです。そこで、同体制を永続的に維持しようとすれば、核保有国の義務の強化、核保有国を含む違反国に対する厳罰化、非批准国のNPT加盟と核放棄など、核保有国に丸投げせずに国際レベルで核管理を厳格化し得る方向へのNPT体制の抜根的な改革を要することでしょう(核兵器禁止条約よりは現実的…)。この改革に失敗しますと、やはりNPT体制は崩壊の危機に瀕します。

 長期的に見ますと、武力行使に訴えてでも“平和の基礎”の維持を優先した方が国際社会の安全性は高まるようにも思えますが、果たしてアメリカは、このジレンマを前にして、どちらを選択するのでしょうか。そしてそれは、NPT体制のみならず、人類の運命もがかかる重大な選択であると思うのです。(おわり)

No タイトル 投稿者 日時
3432 好調な米国経済の裏にあるリスク 大井 幸子 2017-12-15 17:19
3431 北朝鮮の“イスラムすり寄り”は無理 倉西 雅子 2017-12-14 10:08
3430 (連載2)「米国大使館のエルサレム移転」がふりまく ←  (連載1)「米国大使 六辻 彰二 2017-12-13 10:03
3429 (連載1)「米国大使館のエルサレム移転」がふりまく火種 六辻 彰二 2017-12-12 14:39
3428 ドイツ情勢と欧州、世界情勢について 真田 幸光  2017-12-11 13:25
3427 北朝鮮からの木造船漂着 倉西 雅子 2017-12-08 18:07
3426 ミレニアル世代はラストベルトを目指す 大井 幸子 2017-12-07 12:43
3425 (連載2)フランシスコ法王のミャンマー訪問がロヒン ←  (連載1)フランシス 六辻 彰二 2017-12-06 11:06
3424 (連載1)フランシスコ法王のミャンマー訪問がロヒンギャ問題にもつ意味 六辻 彰二 2017-12-05 18:48
3423 米国の威信について 真田 幸光 2017-12-05 10:16
3422 自衛隊が米軍による対北軍事制裁に参加するもう一つの意義 倉西 雅子 2017-12-01 17:48
3421 IMFの見る韓国経済について 真田 幸光 2017-11-30 18:15
3420 (連載2)クーデタに揺れるジンバブエと中国の「二股 ←  (連載1)クーデタに 六辻 彰二 2017-11-28 23:59
3419 EUと“一帯一路”の合わせ鏡に映る哀れなギリシャの姿 倉西 雅子 2017-11-28 16:11
3418 (連載1)クーデタに揺れるジンバブエと中国の「二股」戦術 六辻 彰二 2017-11-27 14:58
3417 (連載2)シンガポールについて ←  (連載1)シンガポールについて 真田 幸光 2017-11-25 15:55
3416 (連載1)シンガポールについて 真田 幸光 2017-11-24 18:27
3415 (連載2)「中東のバルカン半島」レバノンをめぐる宗 ←  (連載1)「中東のバ 六辻 彰二 2017-11-22 10:27
3414 (連載1)「中東のバルカン半島」レバノンをめぐる宗派対立 六辻 彰二 2017-11-21 15:52
3413 (連載2)習近平国家主席は“ビッグ・ブラザー”か ←  (連載1)習近平国家主 倉西 雅子 2017-11-18 17:02

  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]