(連載3)尖閣諸島を守るための基本方策
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投稿者:佐藤 有一 (静岡県・男性・軍事評論家・70-79歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-05-09 11:29  
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No.3520
 (4)領空警戒::尖閣諸島周辺の日本領空に接近した中国軍の航空機に対して、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進する事態が繰り返されています。現在の自衛隊では、緊急発進した戦闘機は領空侵犯した航空機に対して、警告することで領域外への退去を促すだけで、撃墜を含む強制処置を行うことはしていません。これは、領空侵犯に対する処置が警察権での対応に制限されているためです。強制的な対処は、正当防衛か緊急避難の場合にしかできないのです。しかしながら、国際法では警告や威嚇射撃を行っても領空から退去しなければ、撃墜することが認められています。自衛隊法84条(領空侵犯に対する処置)でも、領空侵犯した外国の航空機に対して、これを着陸させ又は領空から退去させるための必要な処置を講じることができると定められています。ところが日本政府は国会において、84条の解釈として「平時の警察活動である」と答弁しているために、強制処置が実施できなくなっているのです。従って、領空侵犯した外国の航空機に対して強制的な行動ができるようにするためには、自衛隊法84条の解釈を、撃墜に至るまでの強制処置を行えるように変更すればよいのです。穏健な国際関係を願って自らに制約を課している状況を、逆に利用して高圧的な対応をしてくる相手に対しては、その制約を取り外すことを考えるのは当然のことです。

 尖閣諸島周辺の領空侵犯に対処する航空自衛隊の飛行隊(F-15J戦闘機約20機)は、2個飛行隊が那覇基地に配備されています。中国軍機に対する緊急発進の回数が増加することにより、航空自衛隊が同居している那覇空港の民間機の離発着に支障が出てきています。これを解消するため、1個飛行隊を石垣島空港に移駐させ、必要な施設を整えて石垣島基地とすることが計画されているようです。もちろん、沖縄県と石垣市の同意がなければ実現し得ないと思います。政府は沖縄県と石垣市の負担軽減のために最大限の努力をしなければなりません。石垣島基地が実現して、2箇所の航空基地で領空侵犯に対処できるようになれば、那覇空港の負担が軽減され、基地防衛の面からも強化されることになります。今後さらなる飛行隊の増設が必要になった時にも対応できるようになるでしょう。石垣島から尖閣諸島までの距離は、沖縄本島からの半分以下ですから、より迅速な領空侵犯対処が可能になります。

 (5)領土防衛::尖閣諸島をめぐる争いが緊迫化しています。いつ武力衝突が起きても不思議ではない状態です。「グレーゾーン事態」がきっかけになるのか、偶発的な衝突からなのか、あるいは意図的な侵攻になるのかはわかりませんが、日本と中国の間で尖閣諸島の周辺で軍事衝突が起こることを想定して、対応するための準備はしておくべきです。日本として最優先で事前に準備しておくべきことは、航空自衛隊の航空基地を完璧に防御するための地対空ミサイルの配備です。これは、どのような作戦でも航空優勢が大前提になるからです。中国が軍事行動を開始する時には、航空優勢を確保するために、最初に航空自衛隊の航空基地を攻撃してくるはずです。巡航ミサイルや弾道ミサイルなどが使用されるでしょう。これを地対空ミサイルで迎撃して、航空優勢を確保するためのF-15J戦闘機を守るのです。また、空母型護衛艦に垂直離着陸ができるF-35B戦闘機を艦載することも、航空自衛隊の航空基地を補完して航空優勢を確保するために有効と思います。航空優勢が確保されていない状況では、陸上自衛隊の水陸機動団による尖閣諸島への上陸作戦も、海上自衛隊の護衛艦による海上優勢のための作戦も、中国軍機による航空攻撃に阻まれて遂行することはできないのです。

 尖閣諸島周辺の海域に航空優勢が確保されていれば、海上自衛隊の護衛艦を出動させて、中国軍の艦艇を排除することになります。この時、同じ海域に海上自衛隊の潜水艦を潜航配備します。この潜水艦が中国軍に与える脅威は、護衛艦よりもはるかに大きいと考えられます。潜水艦が潜航しているだけで、その海域に敵艦は侵入できなくなることはよく知られています。海上自衛隊の潜水艦の優れた隠密性と中国海軍の対潜能力の低さから判断して、尖閣諸島周辺海域における日本の潜水艦の優位性は確保されると思います。このような状況を「海中優勢」と呼んで、中国に対する抑止力としてアピールすることはできないでしょうか。陸上自衛隊に水陸機動団が新しく編成されて、よく話題に昇ります。占拠された尖閣諸島の奪還に活躍することでしょうが、運用上でひとつ注意すべきことがあります。それは「グレーゾーン事態」がエスカレートして自衛隊が対処するようになった場合に、偽装漁民などへの銃砲撃やミサイル攻撃が過剰な武器使用とみなされる恐れがあることです。このような場合に限り、水陸機動団の行動に警察権に類似した制約を課さざるを得ません。同じように、上陸した中国の正規軍に対しても、戦闘機の攻撃によって撃滅することが、政治的な配慮からできない時があると考えておくべきです。この場合は、水陸機動団が出動することになりますが、この水陸機動団の攻撃レベルは、相手の戦力に対応して慎重に決められなければなりません。(つづく)

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