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『アメリカと中国』に寄せて   
投稿者:池尾 愛子 (東京都・女性・早稲田大学教授・60-69歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-23 07:49 [修正][削除]
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No.3572
 今年の2月頃、同僚から興味深い本を紹介された。松尾文夫著『アメリカと中国』(岩波書店、2017年1月)である。ジャーナリストの著者は、唐洲雁著『毛沢東的美国観』(陝西人民出版社、2009年)を手掛かりに、アメリカと中国の深い関係を取材調査するようにして書き上げたのであった。ニューヘイブンのイェール大学と中国人たちとの関係は19世紀、清国時代に始まっていた。私の興味を最もそそったのは、ニューヨークのコロンビア大学のプラグマティズム哲学者ジョン・デューイ(1859-1952)が2年2か月余り中国に滞在し、北京や南京などで哲学・教育哲学等の連続講義を行っていたことである。デューイの聴衆には、中華民国の知識人と共産党を創設する人々の両方がおり、改革を目指す議論をいっそう熱いものにしていたのであった。デューイには中国語表記「杜威」(トゥウェイ)がある。

 1919年3~4月、デューイは夫妻で来日し、東京帝国大学で「現在の哲学の位置-哲学改造の諸問題」と題して8回の連続講義を行うなどした。その原稿が1920年に Reconstruction in Philosophy と題して出版されたことはよく知られており、『哲学の改造』(清水幾太郎・清水礼子訳)、『哲学の再構成』(川村望訳)などの和訳が利用可能である。第一次世界大戦は哲学者たちに大きな課題を突き付けていた。旅行好きのデューイは研究休暇を利用し、渋沢栄一の資金援助を受け、新渡戸稲造邸などに宿泊し、日本人哲学者たちと議論をして意欲的に講義に臨んだのであった。西洋の哲学を歴史的にたどりながら、科学技術の進歩と産業革命の進行に着目し、産業面では旅行・探検・貿易の影響を強調し、功利主義を高く評価したので、経済学や経済史と重なることになった。

 日本滞在中に、教え子だった胡適(Hu Shih)らから熱烈な招待状を受け、夫妻は中国を訪問することを決意し、1919年5月1日に上海に到着した。デューイはコロンビア大学の許可を得ながら中国滞在期間を延長した。『杜威五大講演』(中国語訳)が1920年8月に刊行されたものの、英語原文は残されなかった。1970年頃になって、ホノルルに残っていた中文版が検討され、講義の一部が改めて英訳された。1973年に、「社会・政治哲学」と「教育の哲学」についての講義が R. Clopton とTsuin-chen Ou により、John Dewey: Lectures in China, 1919-1920 と題して出版された。中国での「社会・政治哲学」講義は、東大での講義内容より、西洋哲学により近づきやすい入門講義になっている。中国人哲学者たちとの議論が反映されている箇所がかなりある。中国での「社会・政治哲学」講義にあるが東大での講義にはなかった論点に、キリスト教神学、社会主義などがある。逆に中国での講義の英訳版に功利主義(utilitarianism)が見当たらないのが不思議である。

 デューイの北京講義には、「3人の同時代の哲学者」(ウィリアム・ジェイムズ、バートランド・ラッセル、アンリ・ベルグソン)もある。ジェイムズはデューイがシカゴ大学にいた時の同僚で、『プラグマティズム』(1907)の著者である。デューイの中国での講義の英訳版(1973年)には、上に紹介した以外の講義の英文概要が付録Bとして収録された。付録Aは、「デューイの中国人たちへのメッセージ」である。二つのメッセージがあり、一つには「1942年に米空軍により中国の諸都市に撒かれたプロパガンダ・ビラ」と記されている。二つとも、「中国とアメリカは共通の敵に対して共に戦い、勝利するだろう」と呼び掛けている。デューイには日本人の教え子たちもいただけに複雑な思いがする。

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