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(連載2)「一帯一路」日中協力で日本が留意すべきこと ← (連載1)「一帯一路」日中協力で日本が留意すべきこと  ツリー表示
投稿者:三船 恵美 (東京都・女性・駒澤大学教授/GFJ有識者メンバー・-) [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-03 10:50 [修正][削除]
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No.3622
 「一帯一路」でプレゼンスを増大させている中国は、2015年の「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」のヨハネスブルグ宣言以降、人材育成、貧困削減支援、工業化支援、農業支援など、アフリカにおける経済多様化と開発能力の向上にも積極的な支援を展開している。その一方、「一帯一路宇宙情報回廊」を掲げる中国は、沿線国を衛星測位システム「北斗」でカバーしており、2018年4月にはチュニジアで「中国・アラブ北斗センター」を開設した。また、「デジタル・シルクロード」構想の下で、「一帯一路」の沿線国にファーウェイやZTEなどによる情報通信インフラの整備を進めている。中国が寄贈したアフリカ連合(AU)の本部ビルを監視下においていたことを、今年1月に仏紙『ル・モンド』が報道している。「一帯一路」の開発協力はプロジェクトの一面でしかない。

 今年9月3~4日、北京の人民大会堂で、中国とアフリカ53カ国の首脳・国家元首が参加して「FOCAC北京サミット」が開催された。習近平国家主席は、「手を携えて中国・アフリカ運命共同体を築こう」と講演し、以後3年間で総額600億ドルに及ぶ支援を表明した。これには、2018年末に支払期限を迎える後発開発途上国(LDC)・重債務貧困国(HIPC)・内陸や小島嶼の開発途上国に対する債務免除、150億ドルの無償援助・無利息借款・優遇借款、200億ドルの貸付限度額の設定、100億ドルの中国・アフリカ開発金融特別基金の設立支援、50億ドルの輸入貿易融資特別基金の設立支援、100億ドル以上の中国企業による投資などが含まれる。アフリカの過剰債務問題に世界が警鐘を鳴らすなかで、過剰な融資を続ける中国側のねらいを考えれば、「一帯一路」を「新植民地主義」と批判する声が上がるのも腑に落ちる。FOCACでは、今後の一定期間における中国とアフリカ諸国の関係発展の綱領および指針となる「より緊密な中国アフリカ運命共同体の構築に関する北京宣言」と「北京行動計画(2019-2021年)」が採択された。中国とアフリカは、手を携えて「中国アフリカ運命共同体」を構築することで一致した。また、中国とアフリカは、「一帯一路」の共同建設協力を推し進め、以後3年間及び以後一定期間において、(1)産業促進、(2)インフラ施設の連結、(3)貿易の円滑化、(4)グリーン発展、(5)能力開発、(6)健康・衛生、(7)人的・文化的交流、(8)平和・安全保障の「8大行動」を重点的に実施することで合意した。

 中国は「一帯一路」の共同建設を通じて、インフラだけでなく、ルールやシステムなど、様々な「中国規格」を拡げている。「北京行動計画」には、人材育成のためにアフリカのエリート1000人の研修提供、5万人への奨学金授与、5万人への研修提供、アフリカにおける教育機関への孔子学院の組み入れや教材支援、アフリカ各国が教育制度に中国語教育を組み入れるための支援、貧困削減支援、科学技術分野での修士・博士課程の150人の留学支援、毎年200人の研究者の招聘、メディアの人材育成支援や技術支援などが含まれている。ソフト面で影響力拡大が読みとれる。それこそが、「一帯一路」の人的コネクティヴィティ強化における政治的ねらいである。「国情に合った発展の道を歩むことを後押しする」と強調しながら、中国の理念を国際的コンセンサスとして体現させる一翼をアフリカにも担ってほしいというねらいがある。FOCACで、中国はアフリカに対して「5つのない」の堅持を要求した。「5つのない」とは、(1)アフリカ諸国が国情に沿った発展の道を探ることに干渉しない、(2)アフリカの内政に干渉しない、(3)自らの意志を他国に押しつけない、(4)対アフリカ援助においていかなる政治的条件もつけない、(5)対アフリカ投資・融資において政治的私利を謀らない、の5点である。それはまさに「ワシントン・コンセンサス」への挑戦であり、「北京コンセンサス」への呼び込みである。ワシントン・コンセンサスとは、アメリカ政府や国際機関が発展途上国に対する支援・融資の条件として勧告する新自由主義的な政策パッケージのことである。これに対して、北京コンセンサスは、支援対象国に民主化や自由化などを求めないことで、体制改革に消極的なアフリカや中東諸国などで受け入れられている。北京コンセンサスは、2016年にケニアで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)で日本政府が提起した「自由で開かれたインド太平洋戦略」の理念と一線を画していないだろうか。

 中共は、今年6月22~23日に開催した中央外事工作会議で、「習近平外交思想」を確立させた。中央外事工作会議とは、中共中央による重要会議の一つで、国際情勢と中国を取り巻く外部環境の変化を総合的に分析し、対外活動を展開する指導思想、基本原則、戦略目標、主要任務を明確にすることを主な目的にしている。習近平体制下で二度目となった今年の中央外事工作会議では、「人類運命共同体」構築の旗印の下でグローバル・ガバナンスをいっそう公正かつ合理的な方向へ推し進めること、国の「核心的利益」をボトムラインとする国の主権・安全・発展の利益を揺るぎなく擁護すること、国際実務における「自然の同盟軍」と位置づける途上国との広範な団結・協力などが、以後5年間の外交活動の方針として示された。「国の主権・安全・発展の利益を揺るぎなく擁護する」ことになっている中国が尖閣をめぐって態度を変えることはない。その中国が説く「公正かつ合理的なグローバル・ガバナンス」とは、北京コンセンサスによるグローバル・ガバナンスへの転換を目指す発想である。「一帯一路」を念頭に進められる第三国における日中協力が日本にもたらすのは、Win-Winの関係なのだろうか。Lose-Winで失うことになるのは、日本が掲げる「価値観外交」への国民の信頼や誇りではなかろうか。(おわり)

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